■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■

NEXT TOP


■ HACK


 地球どころか膝元からも噴出して止まない、デスティニープランへの反発。
 “偽歌姫” を擁したエターナルの登場、第一中継ステーション陥落、ネオ・ジェネシス発射。
 シェラ、エクセレイ、ノベンバー、スターブロス――リンクが回復しない部隊が、次々と増えていく最中。
 イザーク・ジュールとディアッカ・エルスマンは、こともあろうに敵に寝返り、しかも上層部に対する不信を次々叩きつけて来る。
 いっそ裏切り者の戯言と一蹴してしまえれば楽なのだろうが、ルイーズ自身、属する組織を信じられなくなりつつあった。
 レクイエム使用、アルザッヘル壊滅の是非。
 なにより、たった今――撃たれたネオ・ジェネシス。

 エース機たるレジェンド、インパルス、デスティニーまでがシグナルロスト。
 さらにはミネルバ撃沈と、形勢逆転も危惧される事態において……ジェネシスは、敵戦力を削ぎ落とすに充分な威力を示しただろう。
 なにしろ相手は、要塞メサイアとレクイエムを狙って来ているのだから、両拠点を結ぶ直線上を薙ぎ払えば最も効率が良いとは素人でも判る。
 機動力に優れたモビルスーツ、アークエンジェルやエターナルといった歴戦の艦こそ取り逃がしたものの、レクイエム上空に固まっていたオーブ艦群はだいぶ数も減ったようだった。
 ジェネシスの射線上から逃げ切れなかった、多くの同胞を犠牲にして。

『勝つ為に戦っているのだ! みな、覚悟はあろう!』

 前大戦時、味方をも巻き添えにジェネシスを撃とうとしたザラ議長は、自分が撃った自軍の兵士に撃ち殺された。
 デュランダル政権に集った議員たちは、当時属していた派閥に違いこそあれ、パトリックが突き進もうとした道を最終的には否定した者だったはず。それが……?

「ルイーズ! ……ねえ、どうなっているの? いったい!」

 こちらの問いに、マトモに応じもない要塞メサイア。縋りついて来るクリスタたち。
 まったく、以前同僚だった面々なら取り乱すにしても、もう少し――と、ある男のすっとぼけた言い分を思い出した、ルイーズの中で何かがプチンと切れた。

「……シュライバー委員長」
「は、はい?」
「全軍に警告が出されてから、実際に発射するまでの秒数は? 普通でした?」
 国防委員長は、ぶんぶんと頭を振って否定した。
「あまりにも短過ぎますよ! ご覧になったでしょう? 退避の為に与えられた時間など、無かったも同然です! 現に、回避が間に合わなかったマルベースやプルトンは――」
「発射口の敵を掃討後、オーブを撃って戦闘を終わらせる。それがメサイアからの通達だったわね…… “オーブ” とは、どこを指しているの。宙域のオーブ軍? それとも地球本土?」
「そりゃあ、オーブ軍でしょう。いくらなんでも本土に照準を向ける訳がないじゃないですか? ジェネシスのエネルギー輻射を考えれば――レクイエムを使っても同じです、オーブなど島ごと吹き飛びますよ。民間人まで虐殺するような蛮行、議長に限って有り得ません」
「そうね……現在、全軍の指揮を執っている人物が、本当に、私たちの知っている議長ならね」
「え?」
「ギルバート・デュランダルが、敵を撃つ為なら、自軍の兵士さえ巻き添えにすると――連合兵ならばレクイエムを使って皆殺しにしてもかまわないと、そんな考えの人だと思っているの? あなたたちは!」
 その場にいた議員、将校たちが揃って目を剥き。
 シュライバーに至っては、凍りついたように動きを止めた。
「破壊したはずのレクイエムを “ザフト” に取り込み、アルザッヘルに対して、降伏勧告もしないまま発射! そもそもデスティニープランの導入自体、評議会は承認していない!!」
「確かにな、議長権限の特例と呼べる範囲も逸脱しているが……」
 ジェレミーの呟きを皮切りに、さらにざわめく対策会議室。
「なに、命令しているのは議長じゃ無いってこと?」
「しかしプラン導入は、議長ご自身が宣言を――」
「だが、メサイアから発信された代物だ! 画像や音声も、コンピュータで合成しようと思えば可能だろう……我々の、誰が立ち会った訳でもないんだ」
「考えてみれば、プラントの今後を決める方策が、寝耳に水だったことこそ異常だな」
「ここにいる者の中で、デスティニープランについて聞いていた――議長から相談を受けていた人間はいるか?」
 互いに顔を見合わせ、困惑の色を濃くする。
「まさか、アスラン・ザラの他にもスパイが潜んでいて、議長やジェセックを……?」
「分からんが――それがロゴスの回し者だったなら、野放しにしておけば、次にジェネシスの照準が向く先はプラント本国になりかねんぞ!」
「だけどロゴスの残党なら、アルザッヘルを撃つはずないじゃない! 思い過ごしよ」
「いや。ロゴス狩りが始まってからというもの、地球連合内も二分化していただろう? 議長の命令と見せかけて、インパルスに破壊されたレクイエムを修理――まずは疑われないように、ロゴスには否定的だった基地の連中を撃ったんだとしたら――」
「最初からオーブ機だけでなく、ザフト艦隊もジェネシスの餌食にするつもりで?」
「だとすれば、デスティニープラン導入の目的は……まさか、エクステンデッド研究所の再建!? 才能云々といった話は建前で、実際は、パイロットして優れた素体を探す為か?」
「いや、しかしそんな――」
「シュライバー委員長! ダイダロスより通信です」
 喧々囂々とした議論を遮って、国防本部とを繋いでいるオペレーターが声を上げた。そのインカムを借り受けたシュライバーが席につくと、
〔レクイエムがオーブ軍に撃たれました! 発射寸前だったため、内部誘爆により台座部分からコントロールまで木っ端微塵に……もう、使い物になりません!〕
〔なんだってあんなに連絡が遅かったんですか、ジェネシスの発射は!? 確かにオーブ艦隊の数は減りましたが、こちらの部隊も逃げ遅れ、新兵たちが怖気づいてしまって――〕
 インカムを劈くように、続けざまに上がる金切り声が、斜め後ろに立ったルイーズにまで聞こえてくる。
「オーブ軍は宣言どおり “壊した” のだろう? ダイダロスを占領して使おうとするならともかく、破壊されたのならかまわん、レクイエムは放っておけ!」
〔ええっ!?〕
「それよりも、レクイエムの照準はどこだったんだ?」
〔さ、さあ? 自分は管制官で……コントロール室にいた者たちに、生存者はゼロ……というより、まだ火災の延焼を防ぐのに手一杯でして、現場を確かめようにも近づけず〕
「ならば今は、基地内の二次災害を食い止めることに集中しろ! 今現在、建物が攻撃されているのか?」
〔い、いいえ。リフレクター内に侵入して来ていたジャスティスと、あのビームを跳ね返すモビルスーツは、レクイエムを撃った途端どこかに飛び去っていって――上空にオーブ艦隊がうろついてはいますが、あちらも混乱しているようで、今のところ砲撃は止んでいます〕
「攻撃再開は、オーブ側が再び仕掛けて来てからだ。それまでは牽制要員のみを残して、基地内の鎮火に当たれ!」
〔はいっ!!〕

 ダイダロス基地との会話を終えたシュライバーは、おもむろに、議員たちに問いかけた。

「……今の指示は、不適切だったでしょうか?」
 レクイエムが潰された今となっては、オーブにくれてやる理由こそないものの、放棄が躊躇われる重要な拠点という訳でもない。
 ルイーズを含め全員が、首を横に振った。
 捕虜がオーブ軍と結託してダイダロスを占拠、プラントに砲口を向けてくるような事態さえ防げれば良いのである。
「今から本部に向かい、レクイエム二射目について異議を唱えてきた部隊に対して、指令を発するつもりでいます。現在、メサイアの指揮権はプラントに仇成す何者かに奪われ、我々が指導者と慕ったデュランダル議長の意志とは乖離している可能性が高い――要塞から送られてくる映像やデータも、もはや鵜呑みに出来ない。メサイアへ赴き、ジェネシスの次の照準を直に確かめ、万が一にも本国や地球に向けられているようであれば断固阻止。オーブ軍の侵攻を阻止しつつ、議長の身柄を保護せよ――と」
 一気に己が意見を述べた、シュライバーは一同を見渡す。
「ご承認いただけますか? 議員方」
 ばらばらに躊躇いがちに、けれど皆が頷いた。

 これがデュランダルの意に反した事態なら、今すぐにも、要塞メサイアから救出しなければならい。
 もしも、望んで招いた結果だったとしたら?
 連れ出す必要があるという点では同じこと。ただ、表現が “身柄の拘束” に変わるだけ。
 自分は、どちらだと思っているのだろう? 
 イザーク・ジュールたちが自軍を敵に回した決定打は、なんだったのだろうか?

 エレベーターに乗り込むシュライバーを見送り際、ルイーズは言った。
「あなたがあんなに喋るところ、始めて見た気がするわ」
「議長の采配が理に叶っている間は、異議を唱える必要もありませんでしたが……通達ミスにせよ故意にせよ、同胞を巻き添えにした事実を容認してはおけません。スパイ潜伏の可能性があるなら、なおさらです」
 国防委員長は、苦笑混じりに肩を竦めた。
「プラントを脅かす存在を排除する、それが責務ですからね」

×××××



「2時方向よりミサイル、6!」
「下げ舵15、迎撃っ!!」

 レクイエムを破壊しても――というより、宣言どおり壊したにも関わらず、アークエンジェルを含めたオーブ軍がメサイアへ向かっているからだろう。ザフト艦隊による砲撃は、激化する一方だった。
 オーブ側にしてみれば、ネオ・ジェネシスなんて代物が開発されていたとは想定外もいいところで。大気圏をも貫き地球を狙い撃てるような物騒な兵器を、残したままには出来ない。
 けれど、ザフトには 『やはりレクイエム云々は口実に過ぎなかったか』 と――今度はジェネシス排除を建前に、要塞を潰すつもりと思われているんだろう、きっと。

「くそっ……! あれはザフト艦まで巻き添えにしたんだぞ? 撃たれた連中が鈍かっただけ、自分には関係ないとでも思ってるのか!?」
「さあな。はっきりしてるのは、こっちも退けないってことだけだ!」
 毒づくチャンドラに、短く応えるノイマン。
〔人が愚痴ってんの聞くと、冷静に考えられるもんだな――〕
「……少佐?」
 自嘲めいた呟きに一瞬気を取られた、ミリアリアは、慌てて手元の計器に向き直る。
〔なんでもクソも無えよな。命令だからだ〕
 ダイダロス宙域から引き返してきたアカツキの、ドラグーンが飛び交う様はまるで金色の矢。
〔プラントのお偉いさんが戦闘停止を告げない限り、このまま、どっちかが全滅するまで戦い続けるしかないって訳だ〕
 左舷に取り付こうとしていたモビルスーツ群は、ことごとく撃ち落とされていった。
 しかし、持久戦に縺れ込んではマズイ。
 ザフトにはまだ、ネオ・ジェネシスを備えた要塞があり、本国から増援や補給も望める。元は他軍の兵器であるレクイエムが使えなくなったからといって、撤退・降伏する理由にはならないだろう。
 けれどオーブ軍の燃料や弾薬は、遠からず尽き果てる。それはアークエンジェルも例外ではない――先行きの暗さに歯噛みした、そのとき。

〔議長のところへ行きます〕

 唐突に、キラが正面モニターに姿を現した。
〔ジェネシスのコントロールを潰して、要塞内に侵入します。自力で脱出するつもりですけど、出来れば、射出口を塞がれないよう確保しておいてもらえると助かります〕
「侵入って……」
 ブリッジに嫌な沈黙が降り。
「ま、まさか生身で乗り込む気? いくら身体能力が高くたって、まともな訓練も受けていない素人なのよ、あなたは!」
〔まったくだ、この馬鹿! 完全に二対一だったメンデルとは違うんだぞ。まだ中には、ザフト兵がわんさかいるはずだ!〕
「そうよ! 何十人、下手したら何百人も一人で相手することに……えっ?」
 途中で言葉を切ったマリューが、呆気に取られたように、サブモニターに映るロアノークを見やる。
〔武装は? 連絡手段は! それにフリーダムはどうする。パイロットのおまえが離れてる間にザフトに見つかったら、スクラップ確定だぞ!〕
〔拳銃と、それから小型通信機があります。フリーダムの起動プログラムはロックしておきますよ。壊されたら――そのときは、そのときです。どのみち無事に停戦したら、プラントへ返さなくちゃならないでしょうし――〕
 けれど、こちらの動揺や。もしかしたらという想いを確かめる間もなく、話題は先へ次へと移ってしまい、
〔逃げ隠れするのも、納得いかない理由で黙って殺されるのも嫌ですから〕
〔拳銃一丁で、どうにか出来るレベルの問題か!? 姉弟そろって、どうしてこうムチャクチャなんだ!〕
 苦りきった感じの、アスランの怒声までが乱入してくる。
〔俺が行く、おまえはエターナルを守っていろ! だいたい居場所どころか要塞の構造も知らずに、どうやって議長を探すつもりだ!?〕
〔そりゃ分からないけど、警備が厳重な方向に進んで行けば間違いないだろうし。分かれ道には案内板だって、ひとつやふたつあるだろうし――第一、そんなのアスランだって知らないんでしょ?〕
〔俺は白兵戦の技量を言ってるんだ!〕
〔でも、僕ならザフト兵のフリだって出来るけど。向こうに、アスランの顔を知らない人なんていないよね? 侵入者だって即バレて、余計危ないんじゃ……〕
〔顔ならヘルメットで隠しておけば良いだろう! だいたい何故、わざわざ生身で――〕
〔だってモビルスーツで入り込むのは、工廠区までが限界じゃない?〕
 言い争いながらも機体を操るスピードは鈍らないあたり、つくづくとんでもないパイロットたちだ。
〔……ま、メサイアを壊すわけにはいかんよなぁ〕
 場違いなほど、のんびりした口調で相槌を打ったのはバルトフェルド。
〔 “ラグナロク” のデータ侵入がどうこうと、こっちのお嬢さんに濡れ衣を着せた犯人どころか、別邸にアッシュ部隊を差し向けた首謀者が誰だったのかも未だに分からん。いくら胡散臭い奴に目星をつけても、とっ捕まえて立証出来なきゃ、オーブに貼られたロゴス支援国家ってレッテルも剥がせんだろう〕
 オペレーター席のメイリンを横目にしつつ、彼が語る間にも、エターナルを襲うビームの嵐。
〔本当に議長殿が無関係で、あれやこれやと誤解されてるだけなら、モビルスーツを降りて直談判すりゃ聞いてくれるかもしれん。どのみちこのままじゃ、どちらかが滅ぶしかなくなるしな――〕
〔ですよね!?〕
〔キラ……!〕
〔隊長! 諌めるどころか煽ってどーするんですかぁあ!!〕
 心配そうに身を乗りだすラクスの肩越しに、頭を抱えて喚くダコスタが見えた。
〔ラクスが止めても聞かない男が、ボクの言うことなんて聞き入れるわけ無いじゃないか〕
「バルトフェルド隊長っ!? キラ君は、まともに銃を扱ったことも無いんですよ? モビルスーツ操縦と射撃の腕は別物です!」
〔ああ。そういえば君は意外と、白兵戦に強かったなぁ〕
 憤慨したマリューに怒鳴られても、バルトフェルドは飄々としている。
〔しかし僕らも顔は割れちゃってるからねぇ。それにメサイアが壊滅すれば、指揮権を持つ者は軍本部以外にいなくなる。移動要塞を撃たれた時点で、ザフトから停戦申し入れって展開になれば良いが――攻撃続行された場合、こっちもアプリリウスを撃つしかなくなるぞ〕
 そうして、ふと凄みのある表情を向けてきた。
〔民間人も多く住んでいるコロニーを。攻め込む為に外壁を破ってしまえば、ヤヌアリウスやディセンベルの二の舞だ……ロゴスの残党に相応しい悪行、だな?〕
 今よりさらに絶望的な状況を想像して、ミリアリアは頭痛を覚えた。
 一般市民の居住エリアにまで、戦渦を広げるわけにはいかない。
「せめて、要塞の構造だけでも判っていれば――」
 歯噛みするマリューの呟きを受け、ロアノークが歌姫を問い質す。
〔クライン派の情報網は? メサイア内部に、誰か、案内役を買って出れらるヤツは居ないのか?〕
 ラクスは、沈鬱な面持ちで首を振った。
 そんな人物がいれば、ネオ・ジェネシスの開発情報もとっくに届いていたはず。メサイアの守りは、議長に賛同する人々の中でも、特に熱心な支持者で固めてあるんだろう。
「……電話番号なら分かるのになぁ」
 ぽそっとした独り言に、背後のチャンドラが反応した。
「え? なに、どういうこと?」
 そうこうしている間にも戦闘は激しさを増すばかりで。
 お互い、コンソールパネルを操作する手は休めぬまま、声を張り上げる。
「ディオキア基地へ慰問コンサートの取材に行ったとき、議長から声かけられて……アークエンジェルの居場所が判ったら、教えてくれないかって頼まれてたんですよ」
 名刺そのものは焼き捨て、手帳にメモを取ったのだが。
「でも。今となっては、なんの役にも――」
〔かけてください、そこに!〕
 唐突に、ラクスをも押し退ける勢いで、メイリンが正面モニターに割り込んできた。
〔メイリンさん……?〕
〔回線をハックして、辿って。メサイアの、だいたいどの辺に繋がるかだけでも割り出せれば――〕
 言い募りながら、はたと気づいたように赤くなって。
 きょとんとした表情で隣に立つ、ラクスを見やり縮こまる。
〔出来るかどうかは、やってみなくちゃ分かりませんけど……すみません、でしゃばって〕
 彼女に集中していた皆の視線が、今度は一気に、ミリアリアに向いた。
「だ、だけど名刺もらったの、もうずいぶん前で。行政府の番号かもしれないし、そもそもちゃんと繋がるかどうかも分からないのよ?」
「それでも、少しでも位置を絞り込めれば! 当てずっぽうに歩き回るより、ずっとマシだわ」
〔……時間がありません、先に行きます!〕
 一足先にメサイア宙域へ辿り着き、防衛線を固めていたモビルスーツ群を突破したキラは、
〔階段や分かれ道に差し掛かったら、そこで一度通信を入れます。なにか判ったら教えてください!!〕
 要塞を覆っているリフレクターを撃ち砕き、射出口と思しき、ぽっかりと開いた空洞へ飛び込んでいった――ほどなく、外殻の一部が崩れて炎が噴き上がり。
〔ロアノーク一佐、後を頼みます!〕
〔分かったよ、ここは俺が押さえてやる。二人組んで行って来い……死ぬなよ!」
〔はい!〕
 エターナルを追い越したジャスティスが、フリーダムに続いて要塞内へ向かう。

 メサイア壁面に取り付いてしまえば、ひとまず、背後からは襲われずに済む。
 もちろん外壁の損壊も厭わず中から砲撃してくる可能性もあるが、空調システムへの影響などを考えると、そう簡単に荒っぽい攻撃手段は取れないだろう。
 やや小型で火力面でも劣るエターナルの周りを重点的に、ドム三機と、グフイグナイテッド、ブレイズザクファントムが固め。
 ほどなく合流を果たしたアークエンジェルは、射出口を挟んで左右に並んだ。
 追いついてきたザフト艦群は、今のところ攻めあぐねている様子だった。
 下手に砲撃すればアカツキに弾かれるし、もっと照準が狂えばメサイア外壁に当たりかねない――けれど依然、圧倒的にザフト有利の戦況だ。
 包囲網は、どんどん厚みを増している……特攻覚悟で一斉に押し寄せて来られたら、さすがに防ぎ切れまい。
 この均衡をいつまで保てるだろう?
 15分か、30分か――キラたちが戻ってくるまで、持ち堪えられるだろうか?

〔これ以上、要塞メサイアを砲撃する意志はありません。ネオ・ジェネシスを排除した今、プラント本国を、地球を一瞬にして破壊しかねない、レクイエムのような殺戮兵器は存在しないものと考えます――〕

 ここまで事態がこじれた今、世間には偽者と思われているラクスの言葉が、昔のように受け入れられるかどうかも心許ない。

〔…………〕

 皆がザフト軍と睨み合う中、ミリアリアは、ディスプレイ表示を凝視していた。
 インカムから流れ来る、聞き慣れた呼び出し音。
 けれどコール先は、まったく知らない場所。始めて電話をかける相手――もしも、これが繋がったら。

 私はあの人に、なにを聞こう?



NEXT TOP

刑事ドラマでよくある逆探知の逆パターン? システム的に可能なのかどうかは、管理人コンピュータに疎いので知りません (汗) C.E世界の技術力と天才ハッカーがいれば可能なんだということで、ひとつ――当てずっぽうで辿り着きました、よりマシかと思われます。はい。