設定裏コラム 〜ここが変だよ種運命〜

【 39話/天空のキラ編 Part.2 】



まずは 『 前回 』 のまとめなど。

キラの戦闘能力
ナチュラルのみならずザフト軍のMS部隊が相手でも、20〜30機程度なら敵パイロットを殺すことなく戦闘不能に陥れることが可能です。同じコーディネイターなのに実力桁外れ。
二年間のブランクを微塵も感じさせないあたり、ナチュラル・一般人に比べ、一度覚えた技能を身体や脳が忘れにくいのかもしれません……それがスーパーコーディネイターと呼ばれる理由の一端?
とにかくSEEDの世界観を形成してる概念故に、人間技じゃないよとか思うのは野暮なんでしょう。ファンタジー世界に魔法があるように、種世界にはスパコディが存在するのです。



【 お題 : 39話、グラスゴー隊に対して不殺で事足りたか? 】


不殺で済まそうと思えば、キラには容易いんでしょう。
釈然としないのは、それで後々弊害が生まれなかったかということ。

宇宙〜地球に離れた軍艦の間で、直接通信は可能か?
TV本編39話、一刻を争うラクスの危機が、ファクトリーやエターナルから直接アークエンジェルに報されず、ターミナルを介して連絡が入ったところをみると。
大気圏を隔てては、一般の回線は使い物にならないようなので。
グラスゴー隊・母艦の通信システムに異常が無ければ、まずザフト軍本部へ報告が行き、そこから地球へ――の手順を踏む必要がありそうです。

分岐 (1) モビルスーツ隊はカメラ or 武器のみ破損
       母艦も砲門を破壊されたのみであり、通信システム etc は無事、自力走行可能だった場合


たとえ25機のザフとグフが戦闘不能に陥っても、7.8機はすぐに再出撃できそうです。
戦艦よりも機動性に優れるのがモビルスーツ。
ビームを避けながら戦い、じぐざぐに逃げられ追いかけていた距離を。バルトフェルドにやられた僚機を回収すべく、遮るものも無くまっすぐ引き返すなら――30分と経たず、最初のエターナル発見地点へ到着しそうなもの。
そこで問題の小惑星が消えていたら。アジトごと逃亡したと想像がつきます。
8機いれば、8方向へ偵察に出られます。所属MS全機、あっさり修理完了すれば25方向以上へ捜索に出られます。
他方、ファクトリーの移動力。
これまた想像するしかありませんが、質量だけでも重そうです。動けたとしても非常に遅そうです。
グラスゴー隊機が、
カメラと武装以外をやられていなければ、当然レーダーも使えます。移動中の熱源なんぞキャッチした日には、すぐさまファクトリーを追い詰め蜂の巣です。
無印フラガ氏発案のごとく “サイレントラン” を行っていたとしても――キラが、グラスゴー隊に与えた被害が軽微であるほど、ファクトリーに火の粉が降りかかる可能性も増大します。
『ザフトの目はこっちに向いただろうし、ファクトリーは岩塊にしか見えないから心配いらないよね』 と?
……舐め腐り切られとるわけですか、ザフトは。
危険を冒してクライン派っつーかラクスに協力してた組織に対する安全確保レベルも、その程度でOKですか。
もはや危機感の欠片も感じませんがッ!!

さらに通信システムが無事であれば、プラント本国を経由して、すぐに地球上のザフト基地へ事態が伝わるはずなので。
エターナルとフリーダムが追っ手を返り討ちにして、宙域をうろついていると騒ぎになります。
どこかでドンパチ始まろうもんなら、お約束のように空から舞い降りてきていた反則モビルスーツが、ヘブンズベース戦には影も形も現れなかった。
『インパルスが撃墜したって話は本当だったんだな』 と、ザフト軍は安堵していたでしょう。
それがエターナル内から大・復・活。しかもパワーアップ?
壊れた機体を修理したのか、また新しく造り直したか――そんなこたぁ些末事。問題は、ほぼ確実にオーブ戦に介入してくるだろうこと。
AA一派の行動パターンなんぞ、ザフト陣営には嫌というほど解り切っているはずです。
真の脅威はアークエンジェル本艦ではなく、フリーダム単機であることも。
オーブへ攻め入れば、またジャマしに現れるでしょう。
だったら宇宙からオーブへ向かう軌道上に、待機しときませんかね……レジェンドっていうか、レイあたり。
待ち伏せしとけば一撃ですよ?
少なくとも “乗ってるだけ” の少女がコックピットにいた、ジャスティスなんぞ木っ端微塵に出来たはずですよ。
ジブリールの宇宙行きはともかく、復活したフリーダムがオーブを援護しに現れて、敵軍が勢いづくのを良しとする理由があるとは思えません。
オーブ戦に掛かりきりで身動きが取れなかった、というならいざ知らず。
フリーダム復活を把握していたなら。キラに対しては特に容赦しない雰囲気だったレイが、悠長に 『初手から三機も出る必要はない』 とシンを見送って、ルナと一緒にミネルバに残るだなんて不可解極まりない。
デュランダル議長が 『黒』 だとするなら。
キララク&オーブを、デスティニープランの障害と看做していたなら、なおさらです。

エターナル&ストフリに及ぶ追撃の手が、オーブ戦開始後まで遅れる理由が他にあったとすれば、少なからずザフト内部に紛れているだろう、クライン派の工作員が、
『微力ながら、ラクス様が安全に避難するための時間稼ぎを……!』
として、コンピューターの故障やら連絡ミスやらを装い、情報伝達を遅らせた可能性もありますが。
あからさまに先延ばしては怪しまれる、そんなもの粘って半日がせいせいでしょう。

じゃーなんなんだ訳分からんわ、とゴチャゴチャ書き連ねてきたわけですが。
不可解な空白を一蹴する選択肢がひとつ。
キラきゅんが、きっちりグラスゴー隊を走行・通信不能にまで陥れとけばオールオッケイなのです。


分岐 (2) モビルスーツ隊は、コックピットこそ破損を免れたものの機能停止
       母艦も、通信システムを含む動力系までやられて、自力走行不可能だった場合


ファクトリーが行方を眩ます時間は、充分に稼げ、ドムトルーパーの最終調整も滞りなく完了。
グラスゴー隊は身動きが取れず、システム復旧が終わるまで軍本部への連絡も叶わず、増援部隊の到着は大幅に遅れるため、エターナルも余裕で逃げられるでしょう。
宇宙空間において物体は、制動をかける力が無ければ半永久的に流されていくようなので、被弾した機体は (一部が動力系の破損を免れたとしても) 、四方八方へ漂流していき。
虎さんは 『俺はキラほど上手くない』 らしいので、戦闘開始序盤、虎ガイアにやられた機体はもっと悪い状態と予想されます。

レイを含め、ザフト軍本部が事態を把握していないため。キラは、なんら妨害を喰うことなくラクスと手を取り大気圏降下。
地球から駆けつけたストライクと、エターナルが接触してストフリ復活という経緯を知らなかった議長は――オーブ戦後、演説するカガリの隣にひょっこり現れたラクスに度肝抜かれると。
(グラスゴー隊の報告を受けていれば、ラクスがモビルスーツに乗るとまでは考えず意表を突かれたにしても、もうちょい違った反応をしそうなものですし)

そんなこんなでキララクは、無傷でオーブへ。
そこは議長にとって誤算だったけれど、ジブリールのシャトルがまんまと月基地へ逃げ去ったのは、デスティニープラン的には無問題。
その後、グラスゴー隊の被害が判明すれば、これ幸いと。
“ジブリールの逃亡ルートを作って逃げた武装勢力” として、エターナル&ストフリはロゴスの共謀者だと罪を被せてしまえば良いわけです。
地上の艦隊を振り切っただけで逃げおおせるほど、元から宙域の警備は手薄だったと思われますが――ジブリールを見逃したい議長の都合が絡んでいたとしても、誰かに追及されたら、
『ヘブンズベースで取り逃がした結果から、ザフトは海中ルートをを中心に警戒していた』
くらいに答えとけば済みそうですし。


要は、キラが敵軍パイロットを、下手すりゃ窒息死しかねない目に遭わせるのと。
ザフトが、エターナル&ストフリの存在を知りながら、ザルにも程がある警備体制で放置してくれるの、どっちが非現実的かっつー話になるんでしょうか。
グラスゴー隊が救助されたかどうか、原作に描写が無かった以上、すべては闇の中で想像する以外ないのです。
どっちでも良いっちゃー良いのです。解釈次第な好みの問題です。

けれど後者と捉えて 「ま、そんなモンだよね。TVアニメなんだし、キラが格好良ければべつにいーじゃん♪」 で済ませられるくらいなら、そもそも原作が放映終了して丸二年も経ったというのに細部に拘り続けて、萌えも燃えも後回しな補完小説なんぞ書いとりゃせんですパトラッシュ……僕モウ疲レタョ。

それでも書き進めているうちに、あれやこれや考えついたりで今までなんとかなってきたので。
この先も打開案の神様が降臨してくれればいいなーと思いつつ、今月20日過ぎを目処にSS連載再スタートの準備中なのでした。

【2008.4.10】