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■ アスラン脱走 〜Interlude〜


 ところ変わって、アークエンジェルの医務室にて。

「なんか、またうなされてるな。こいつ……」
 小さな椅子に腰かけ、カガリは、さっきから眉を曇らせている。
「ねえ、キラ。さすがに、これは可哀相なんじゃない?」
 歯を食いしばって唸り続けるアスランを眺めつつ、ミリアリアが話しかけると、
「う〜ん……でも、しかたないよ」
 キラは、しごく冷静に応じた。
「眠りながら暴れて傷口かき毟るから、こうでもしておかないと、いつまで経っても怪我が治らないし。アスランの付き添いに人手を割けるほど、アークエンジェルには余裕もないし」
「それはそうだろうけど。普通の病院でこれをやったら、確実に患者虐待で訴えられるわね……」

 なにしろベッドに転がるアスランは、伸縮自在のバネと金属板を材料にキラが手作りしたギプスで、全身を容赦なく拘束されているのだ。いくら怪我悪化防止のためとはいえ、傍から見ると窮屈そうで仕方がない。
 ダーダネルスの海辺で話し合いが決裂したときは、今度会ったらタダじゃおかない、などと思ったものだが――あまりに気の毒すぎる姿を見ていたら、もうそんな気も失せてしまった。

「う〜ん……」
 カガリは、なにやら考え込みながら、しきりに小首をかしげている。
「どうかした? カガリ」
「動きは制限するけど、身体には、ほとんど負担がかからないように造ってあるよ、これ」
 キラと二人して訊ねると、彼女は妙なことを言いだした。
「……いや。お父様がよく見ていた昔のアニメに、こんなギプスがあったなぁと思って」
「アニメ?」
「どんなの?」
「スポ根もの。主人公の父親がさ、息子をプロ野球選手に育てるのに、大リーガー養成ギプス――とか、なんかそんな名前の修行グッズを発明して。それ着てうさぎ跳びとかするんだ」

 ミリアリアは、キラお手製ギプスを装着したまま、うさぎ跳びするアスランを想像してみた。
 ……酔狂な話だとしか思えなかった。

「へぇ。ウズミ様、野球が好きだったんだ?」
「うん。婿か孫が出来たら、キャッチボールするんだ〜って言ってた」
 懐かしげに、カガリは語った。
「ナントカの星ってタイトルで、家にDVD全巻そろってた。そういや、アスランも観てたなぁ……」
「ふーん、おもしろいのかな?」
「さぁ……昔のTV番組のことは、よく分からないよね」

 姉は、木の陰から弟の特訓を見守らなければならない、という鉄則がある。等々、カガリの解説が続く中――アスランは、うーうーと苦悶の表情でうなされていた。



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とくにどうということはない、オチ編。幼少期のカガリは、けっこうウズミ様と一緒になって、男の子みたいな遊びをしてたんじゃないかなぁと思います。そんで、侍女のマーナさんに二人して怒られる、と。